青井ねおんさんに聞いてみた!
一人で作る『同人誌』の世界

メイン

『個人などが非営利で制作した出版物のことを『同人誌』といいます。メディアコース・出版でもTanTanをはじめとした様々な出版物を制作していますが、個人で本を作っている学生は学内全体でも決して多くはいません。
今回はそんな同人誌について、同じく芸短生で、個人で本の出版活動もしている『青井ねおん』さんに、一から本を作ることの楽しさや、本作りで大切にしていることなどについて話を聞いてきました!
 
 
 

高校時代の作品

きっかけは先輩の無茶振り!?手探りで始めた本作り

――今回は青井さんがご自身で本を作ろうと思ったきっかけや、「興味はあるけど何から始めればいいのかわからない」という人が動き出すためのヒントなどをお聞かせいただければと思います。まず、青井さんが本を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

青井 不可抗力みたいなもの……ですね。高校2年生の頃に、所属していた文芸部の先輩が「コピー本を文化祭で売りたい」って言い出して。作品の締め切りを決めて、文化祭の予算で印刷代を申請したところまではよかったんですけど、3年生は受験があってほとんど話し合いに参加していなかったんですよね。それで「あっ、これは自分がやらないといけないやつだ」って気がついて、血眼になってサイトを参考にしながら作りました。そこから転換点があったりして、今でも本を作り続けています。

――始まりは先輩からの無茶振りだったんですね! 作品からとてもこだわりを感じるので、自分から進んで作り始めたんだと思っていました。

青井 アニメや漫画も好きだったし、同人文化そのものに対する興味はありました。ただ、当時はオリジナルの同人小説が出回っている様子が全くイメージできなかったんです。ほら、なんとなく同人って聞くとコミケとかが思い浮かんだりしませんか?

――確かに、テレビなどで同人が話題になるのってコミケくらいかもしれませんね。

青井 しかも映るのってアニメキャラクターのコスプレとかが多いじゃないですか。だから自分もなんとなく『同人誌=二次創作』ってイメージが強かったんです。オリジナルの同人小説が出回る様子が想像できなかったというか……。

――何度か同人誌を売っているお店の前を通ったことがありますが、漫画がかなり目立っていたような気がします。

青井 そうなんです。でも実は結構オリジナル小説の同人誌を出している人って結構いて、自分が参加した『文学フリマ』みたいな、オリジナル小説だけが並ぶイベントも意外とあるんですよね。

――今日は京都で開催された文学フリマに出店されたときの作品をお持ちいただいていますが、この小説集『死体を捨てに行く話』は青井さんが個人で初めて作った本なんですよね?

青井 そうですね。ただ、高校の頃に作ったコピー本とは違って印刷所に依頼して刷ってもらったものなので、結局また一から調べて作りました(笑)

レイアウト

手を動かし続けて気づく、数ミリの大切さ

――個人で作った本は小説集が一番最初ということですが、制作中に困ったことなどはありましたか?

青井 正直、執筆以外の全部が大変でした。例えば、この小説集(『死体を捨てに行く話』)のカバーイラストは高校3年生の頃に依頼をして描いてもらったものなんですけど、当時は相場も依頼する方法も本当に何一つとしてわかっていない状態だったんですよね。

――高校在学中というのも驚きましたが、依頼の方法が気になります。

青井 小説集の表紙を描いてくださった方には、個人向けのコミッションサイトを通してお願いしました。クリエイター自身が価格を決めているから値段で気を揉む必要がないし、企業を挟んでいるおかげでトラブルにもなりにくいので、とてもおすすめです。

――コミッションサイト、利用したことはありませんがCMで流れていたのを聞いたことはあります。確かに便利そうですね。ちなみに、カバーイラスト以外で制作を依頼したものは他にありますか?

青井 印刷を除くと、あとはZINEのゲストイラストだけですね。小説集はありません。タイトルの文字も、裏表紙も、レイアウトも全部自分で作りました。

――先ほど「何一つわかっていない状態だった」と仰っていましたが、手にとってみても全然理解していなかったように見えないです。

青井 ありがとうございます。正直今見ると顔を覆いたくなるようなミスもちらほらあるんですけど、分からなくてもとにかく手を止めなかったのがよかったのかな、って勝手に思っています。

――確かに、手を止めないって大事ですよね。頭だけで考えていると凝り固まりがちになるというか。

青井 不思議ですよね。特にデザイン周りは手を動かさないと気づけないというか、小説集を作っているときも、適当に動かした数ミリで「ここまで変わるのか!」と思うようなことが結構ありました。

――文字だけの本はまだ作ったことがありませんが、やはり文字でも変わりますか?

青井 かなり変わります。意識するようになってきたからか、最近は普通の文庫本を読んでいても気になるようになりました。家にある文庫本の中では『集英社文庫』のレイアウトが好きです。

ZINE『虚構 Vol.1』

書きたいことから本の種類を選ぶ楽しさ

――青井さんは高校生の頃から小説の執筆活動を続けているとのことですが、最近制作されたのは小説本ではなくZINEですよね。あえてZINEを選んだのには何か理由があるのでしょうか?

青井 自分が勝手に考えているだけなんですけど、『ZINE』は冊子の種類というより一つの表現方法の一つなのかな、という気がしていて。同人誌は一応読み手がいる前提で作られているものが多い印象なんですけど、お洒落なカフェで見かけるようなZINEってもっと個人的なんですよ。読み手のことを考えずに自由に作られているというか、読むだけでその人のことがなんとなく分かってくるみたいな……。うまく説明ができないんできないんですけど、要するにZINEで「登場人物の個人的な本」を作ってみたかったんですよね。

――私も上手に言葉に表すことはできませんが、なんとなく分かる気がします。1年生で受講した出版の授業でZINEを制作したときに、確かに文体やレイアウトにこだわらずにとにかく自分の熱量をぶつけた記憶があります。

青井 正しくそんなイメージでZINEという媒体を選びました。中の文章を全てモノローグにして、画もあくまで人物の視点を切り取ることを意識しました。小説にしては結末が突飛になっていますが、それがよりZINEの個人的な感じを出せたんじゃないかなと思っています。

――「ZINEの特徴を活かすことで、より登場人物の心象に添った作品になるようにした」ということですね。

青井 はい、その通りです。同人誌は書きたいことに合わせて気軽に本の種類を選べるので、とても楽しいです。

青井ねおん著作

大切にして欲しいことは「とにかく楽しむこと」

――最後に、本作りに興味のある方に向けてメッセージをお願いします。

青井 自分の専門が小説なのでほとんど小説の話しかできなかったんですけど、当然漫画でも、写真集でも、何でも自分で自由に作れるのが同人誌の魅力なので、もし興味を持っているならぜひ一度作ってみてください。
あと、本作りに限った話ではないんですけど、やっぱり一番大切なのは『楽しむこと』だと思います。クオリティは作り続けるうちにどうにかなると思うので、とにかくまずは楽しんでください!

――ありがとうございました!

(フリーペーパー『TanTan vol.9』では、さらに作品についてのこだわりを語っていただいています。卒業制作展やオープンキャンパスなどでも配布しているので、ぜひ紙のTanTanも読んでみてください!)

PAGETOP