恋愛小説が好きな私が選んだ
切なく甘い恋愛小説5選!

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人は誰でも恋愛小説というものに一度は手を出したことはあるのではないだろうか。男女がただただいちゃいちゃして終わったり、恋のライバルが現れて喧嘩したり…。

そんな中でも私は悲しい恋愛小説が好きだ。ひたすら悲しい気分になって最後に幸せな気分で終わる小説が一番好きだ。泣いたり笑ったりと感情が忙しくなるほうが読んでいる分には楽しい。胸が時々苦しくなるようなそんな小説を選んだので気になったら手に取ってほしい。

僕は明日、昨日のきみとデートする

すれ違う2人の40日間の恋

『僕は明日、昨日のきみとデートする』 七月隆文

あらすじ

京都の美大に通う学生の南山高寿(みなみやまたかとし)は、通学電車の中で出会った福寿愛美(ふくじゅえみ)に一目ぼれをする。勇気を振り絞って声をかけ、別れ際に「また会える?」と聞くが、それを聞いた彼女は突然涙を流し高寿に抱き着いた。驚く高寿には、この時の彼女の涙の訳を知る由も無かった。

翌日、美大の授業で動物園に行くと、そこで昨日の彼女と再び出会う。その後、すぐに二人は意気投合し、交際がスタートするが、初めてのデート、初めて手をつなぐ、初めてお互いを名前で呼び合う…。そんな初めてのことがあるたびに、彼女はなぜか涙を流す。高寿はそんな彼女を不思議に思いながらも愛情を深めていく。

違和感を覚えたのは、誰にも見せたことのない自作小説のヒロインの名前を、彼女が知っていると気づいた時だった。「予知能力でもあるの?」と聞いた高寿に、彼女は言った。「あなたの未来がわかるって言ったらどうする?」
初めてキスをして愛し合った日、高寿は想像も出来なかった彼女の秘密を明かされる。

感想

この作品の魅力は世界観だ。序盤は二人のイチャイチャや高寿の初々しさが見られて微笑ましくなるが、終盤になるにつれて切なくなる。高寿の動作や仕草に泣いてしまったりする愛美の姿に「なんで?」と思いながら理由を聞かずに愛していく高寿に一途さをとても感じる。

私がこの小説を買ったときに付いていた帯には「彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる」と書いてあったので半信半疑で最後まで読んでいったら無意識に最初のページに戻ってしまうくらいこのフレーズが大正解。この本をワンフレーズに表わしたらそんな感じだと思う。

最初は必然的に高寿の感情になって読んでしまうが読み返した時に愛美視点で読むのも面白くなると思う。 一回最後まで読んでしまうと自然と一ページ目まで戻ってしまう、そんな作品になっている。小松菜奈と福士蒼汰が主演で映画をしているのでそちらもぜひ。

海に願いを 風に祈りを そして君に誓いを

運命の日を巡る女の子と男の子のお話

『海に願いを 風に祈りを そして君に誓いを』 汐見夏衛

あらすじ

舞台は小さな海辺の街。優等生でしっかり者だけ照れ屋で天邪鬼な凪紗と、おバカで底抜けに明るく凪沙のことが大好きな優海は、幼馴染で恋人同士。2人は過去のある出来事から、特別な深い絆で結ばれている。

でもある夏の朝、1つの決意を胸に目覚めた凪沙は、その日を境に優海に対する態度を一変させる。甘えを許さず厳しく優海を鍛えていく日々

忘れ物が多い優海に対して手帳を買いに行こうと言ったり、普段はあまり写真を撮ろうと言わない凪沙が優海の写真をたくさん撮ったり、テスト範囲が変わったことを知っていたりとちょっとずつおかしな反応を見せる凪沙を疑うそぶりもなく付き合う優海。 そんな風に過ごしていたある日。優海は凪沙に「別れよう」と言われてしまう。優海は凪沙の意思を尊重し、別れようとするがやはり別れたくないと凪沙を海辺に呼び出す。そして凪沙からこの一カ月間の真実を知らされる。

感想

作中に何度も出てくる「運命の日」がなんなのかが最初から読み進めていくと最後に納得できる。自分が何度も辛い思いをしているのにそれを乗り越えてポジティブに生きようとしているのに胸が打たれる。

全体的に「運命の日」と書かれており、運命の日がいつかは最後まで分からない仕組みになっている。

魅力は優海にある。優海の人柄は人気者になる理由も頷ける。男女に好かれる性格をしているのに凪沙に一途だということも魅力だ。読み進めていくうちに優海の過去と凪沙の過去がわかっていくのだが優海の過去が壮絶だ。竜神様を信仰しており手を合わせて祈っている様子が度々見られる。優海は純粋だから神様を信じられるのかと思っていたけれど優海の過去を知った後にそのシーンを読んだら凪沙みたいに「なんでそんなに神様を信じられるの?」と聞いてしまいそうになる気がする。そのくらい壮絶な過去を送っている優海の明るくてそれを感じさせないくらい幸せな生活を送っているのも一つの魅力だ。

君がすべてを忘れる前に

幽霊と幽霊が見える男の子の恋物語

『君がすべてを忘れる前に』 喜多南

あらすじ

結城クロは、ある日の放課後の教室で同級生だった長谷川紫音の幽霊と出会う。幽霊に接触できる霊感体質のクロは紫音を成仏させるため、彼女の心残りを聞き出そうとする。しかし生前からその見た目に反してわがままで傍若無人であった紫音は「私を生き返らせなさい」と無茶な要求を突きつけて下僕のようにクロを振り回す。

幽霊になってさらに奔放に振る舞うようになった紫音は、学園内をさまよう他の幽霊を見つけてきては、彼らの抱える事情にクロを巻き込んでいく。渡せなかった恋文を探す女子高生の霊、音楽室のピアノにとりついた男子生徒の霊、校庭の木の下にいるいろんなことを忘れてしまった少年の霊。クロは様々な伝手を頼って、彼らを成仏させるために奔走する。

次々と迷い込む幽霊たちの相談に、クロと同様に霊能力を持つクロの家族たちも関わっていく。おっとりした性格の長女・藍子、紫音相手に敵意を隠さない次女の緋色、小動物のように愛らしい末妹・黄。両親を亡くしたクロにとってかけがえのない家族であり、頭の上がらない姉妹たちだ。過去につらい思いをした経験から「幽霊には関わらない」という約束を姉妹と結んでいたクロは、その約束を破って幽霊と関わるようになった理由を問ただされる。


感想
幽霊が見えるクロと幽霊の紫音の話。最初ホラー系かなと思っていたけど読んでみるとただただ切なく胸が痛くなる。幽霊が見えるだけで人の死が軽く見えてしまうのがとても不思議。しかも姉妹それぞれに能力があってそれを使って幽霊を成仏させていくのが面白かった。

結城姉弟全員の名前に色の名前が入っていて覚えやすいのだが、クロとほかの姉妹に距離を感じてしまったので何か作中に書かれるのかなと思ったら何も無かった。思い過ごしだったのかもしれないし深読みしすぎたのかもしれない。 最初は軽い文章で小説読まない人でも読みやすく感じた。最後の最後でまさかその人!?みたいなどんでん返しがあるからぜひ読んでほしい。

記憶喪失の君と、君だけを忘れてしまった僕。

一人の女子高生に出会って人生が変わった大学生

『記憶喪失の君と、君だけを忘れてしまった僕。』 小鳥居ほたる

あらすじ

講義を終えた公正は、大学付近の牛丼屋で昼食を済ませたあと、ひとり暮らしのアパートへと戻る。大学と家の往復、何の目的もなく過ごす日々。卒業後はどんな仕事に就いているのだろう。そのとき、そばに支えてくれる人はいるのだろうか。将来のことを考えると不安になってしまうから、ひとまずはアパートへ帰るという目標だけを抱えて歩く。が、見慣れた住宅街を抜け、見慣れた街角を曲がった公正は、見慣れないものの現場に足を止めた。アパートの前に、セーラー服姿の女の子が倒れていたのだ。

長い髪、長い睫毛、宝石のように輝く瞳。華怜と名乗った美しい彼女に、構成は目を奪われた。いや、奪われたのは目ばかりではない。心までも既に彼女のものだった。一目ぼれというやつだ。しかし彼女は頭を強く打っており、自分の名前以外のすべてを忘れていた。病院か警察に行こうと勧めるが、華怜はいやだと首を振った。そればかりか何かに怯えるような彼女の態度を慮って、公正は、記憶が戻るまでの間だけ、彼女を家に住まわせることにした。

着替えを買ってやれば愛らしい笑顔を見せ食事をすれば食べ物の好みの一致ぶりに驚く。出会ったばかりだとは思えないほどの親密さを覚え、公正は華怜に惹かれていく。一方で、華怜の家族は見つからない。それらしい少女が事件に巻き込まれたというニュースもない。けれどすぐに、ふたりにとって華怜がどこの誰であるということは問題ではなくなった。公正は一人の女の子として華怜を愛していたからだ。いまや公正は華怜のおかげで「小説家を目指す」という夢を取り戻し、華怜もまた、そんな公正を支えて生きたいと願うようになっていた。

こんな幸せな日々が永遠に続けばいい。だが、そんなふたりをあざ笑うように、華怜の記憶が戻ってくる。
感想
タイトルと表紙に惹かれて買った作品。文庫本なのに413ページと少し長めの本ではあるがさくさく読めた。最初は単純に記憶喪失ものなのかなと思ったけどいい意味でも悪い意味でもその考えが変わった。 途中で違和感を覚えてしまったりすることもあったけど最終的にはすっきりした印象。最後まで読んでもう一回最初から読み直すともしかしたら人によっては「気持ち悪い」と思う人もいるかもしれない。

今夜、もし僕が死ななければ

一人の人間の成長物語

『今夜、もし僕が死ななければ』 浅原ナオト

あらすじ
14歳の男子中学生・遥はもうすぐ死ぬ人が見える。もうすぐ死ぬ人の胸には「海」が見えるからだ。第一章では末期がんで入院した中年男性が一人称となっているのだが、そこに三人称として登場する遥は「波打つ水の塊のようなもの」という言い方で自分の特殊な能力を説明している。「死神」と罵声をあびせられることがあるにもかかわらず、凛とした態度で「あなたはもうすぐ死にます」と告げる遥。

どうやら遥は、自分の能力を生かして人のためになることをしたいと思っているらしい。しかしというかやはりというか、「死が見える」能力を上手に使うのは至難の業。重いし暗いのだ。だから周囲の人とのかかわり方もどこか希薄で危なっかしい。5章までそんな遥の24歳までが綴られている。大人になっていく過程で自分の特殊な能力を自身がどう捉え直していくのか。

感想

テーマとなる映画のタイトルが各章のテーマになっている。10歳から24歳までの一人の少年の人生が描かれていてとても面白い。主人公なのに第三者目線で描かれるのはまた違った視点があるなと感じた。私は特段映画が好きなわけでもなくこの章ごとに描かれている映画の名前も特に知らないものばかりなのだが、それでも楽しめる内容になっている。その俳優さんだったり女優さんだったりの名前がチラッと出てくるだけで特段話の内容に触れているわけでもないので知らない人でも楽しめる作品となっている。 最初はとても危なっかしくて死んでいく人に過干渉な気もするけど遥の考え方や行動には私でもそうするかもなと思ってしまう部分もあり、共感できるところも多い。

遥がどう感じて生きていくのか楽しみな一冊。

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