映画研究担当の石塚洋史先生
映画は素敵な嘘で作られている!

先生 一枚目

映画研究を担当する石塚洋史先生。高校生のころから映画をたくさん見るようになり、今まで見た本数は数えられないほど。約20年弱、映画の構図分析をして細かく映画を見てきた。映画研究は、石塚先生おすすめの映画を見て、先生がポイントを解説してくれる授業だ。新しい発見や映画について考えが深まる。生徒自身も映画を細かく見ることの楽しさを学び、先生も生徒から教わることがあるという。そんな石塚先生に取材してみた。

Q1,映画研究を受ける生徒に何を学んでほしいですか

A:映画って嘘だと思ってる。世の中って嘘って駄目だ。とか、嘘ってインチキだとかって言われるけど、映画ってそもそも嘘で。なんというか「素敵な嘘の持つ力」って若い人からお年寄りまでの、たくさんのスタッフさんが一丸となって大きなウソをつくために必死で頑張って映画作ってる。そして、その大きな嘘っていうのが、嘘なんだけども観客に響いて本当のものを伝えてくる。世の中、本当のものだけが楽しいんじゃなくて、素敵な嘘を通して、本当のことを得ることができるっていう楽しさっていうのは学生さんには学んでほしい。

先生 二枚目

Q2映画がもたらす人への影響

A:これね、実はあんまり大きくないと思うの。もし映画がものすごく影響をもたらすんだったら、敷居が髙くなってるんじゃないかなって。要するに、映画館に行くと、見終わって映画館出た後、自分が変わってしまうんじゃないっていうのは、楽しみだけど怖い感じがして。例を言うとね、高いフランスコースとかは敷居が髙くて。食べ終わった後、自分が変わってしまうんじゃないのかって思う感じ。高くないふつうの定食屋さんに行くっていうのは敷居が低くて、つまり映画は影響力がそんなに大きくないからこそ、実は長く付き合えるんじゃないかなと思ってる。僕の授業が映画研究だから、結構な学生さんが来てくれるっていうのはあって、ま。ぐっと来たらもうけもの。来なかったらその程度のっていうのがあるんじゃないかって思ってて。

ただ、その中で自分以外のほかの人。百人、千人は全然影響は受けないけども、自分にだけはこの映画かなり来た。っていう映画が誰しもあるような気がするのね。もしかしたらその。僕らが映画を見続けるっていうのは一個一個旅みたいなものがあって。一個一個は影響が小さいんだけれども、油断したころに、ガンっとすごい映画に出会うっていうことがあると思う。答えになっていないかもだけど、映画は影響は少ないんだけども、その少ない中で急にガンって来るのが楽しみな、そういう人生の楽しみを与えてくれるのかなって。映画館に行く。レンタル屋さんで借りてくる。アマゾンプライムやネットで見る。っていう行為そのものの方が、実は僕は影響が大きいんじゃないのかなって思ってる。

Q3最近の映画の良さと昔の映画の良さの違い

A:昔の映画っていうのはカメラマンしか見ることができないのね。監督が覗いてみたりするってことはあるけど。出来上がってみないとわからないってとこがあって。それっていうのは一か八かの作りになるかって言うと。そうじゃなくて、その出来上がりを予測するために、相当な計算をしてるっていう、どんなに頑張っても半日くらいかけて現像処理や焼き付け処理ってのがあってそれで試写室(プレビュールーム)で見ないと、見ることができない。だから、現場で把握できないからこそスタッフが人智を尽くして、コントロールするその意志っていうのが丁寧な作りになってるんじゃないかなって思う。

今の映画の良さは、まず一つは伝統っていうものは継承されているわけね。やっぱりその伝統っていうのを継承しながら乗り越えようとしていく意思を感じるとき今の映画の良さかなって思う。そしてもう一つが、例えばあの僕らが古い映画を見るときっていうのは例えばアカデミー賞取りましたとか、カンヌ映画祭でパルムドール取りましたとか、あと興行収入いくらでしたかって言ってみればその。ある程度データって、それを踏まえてみるから保険みたいなもので、あのアカデミー賞とったんだから面白いだろうとかあるだろうから、今、劇場で評判の映画って評価が定まってないわけで、例えば歴史に立ち会うっていうか、評価が定まってないものを見る楽しさ。これがすごく大事なことだと思う。

だから学生さんにはたくさん古い映画を見てくださいねっていうんだけど。実際はコロナの問題があるわけでなかなか映画館に行くことはできないんだけど。できるだけ映画館でまだ評価が定まってない新しい映画を見て、そして自分の頭で面白いかどうかっていうのを、判断するってこと。それを自分自身でスリリングに考えることができるっていうのを新しい映画にしかできないと思う。

先生 三枚目

Q4,映画の楽しさを倍増させる方法

A:これはまず映画館で見ること。理由は、同じ映画を映画館以外で見たとき、後悔するから。 もう一つは友達と。というか誰かと一緒に見に行くこと。見終わって面白くなかった場合するじゃない仮に、で、一人で見て面白くなかったら。もんもんと時間と、お金無駄にしたーって思うんだけども、二人だったらおもしろくなかったことで盛り上がるよね。そうするとその会話自体も面白い。だから映画研究が終わった後に、みんなが今見終わった映画の話をしながら教室出ていくのがすごくうれしい。で、その何時間でも何分でも同じ時間を共有するわけじゃない。

だから理想は映画をみた後に、おしゃべりするっていうのがいいかなって思う。で、もう一つはやっぱりその映画に関する本を読むこと。特に評判がいいんだけれども自分にはピンと来なかった映画っていうの、みんな一回は経験したことがあると思うのね。その場合、本を読むと、外国映画の場合だったら日本にはない文化っていう、もののしきたりであるとか、習慣であったりとか、さりげなくあって。例えばイタリア映画だったら、イタリアの人が見たらもうなんとも難なくわかることっていうか、フランスの人だったら難なくわかることっていうのが僕らにはわからない。そこで本を読んだら、ああなるほど、セリフには入ってないけどもこういう意味だったのかっていうのがあったりするわけね。

で。やっぱりそういうことでかといって必ずしもイタリア映画見たかと言ってイタリア語の文献を読めとは言わないけれどもやっぱりその気になる映画に関する本っていうのは読むってこと。そして、百回見てもわからないことってあるわけ、映画って。百回見たらわかることがあるんだけども、百回見てもわからないことっていうのがあって。でもそれが一回本を読むことによって。あ!そういうことかってことがあるから。で、だから本を読むことによって、その自分のとは違った見方がわかるっていうのが、これはやっぱり映画の楽しむ秘訣だと思うね。

Q5,先生にとって映画とは

A:ちょっと厳しい言い方をするけど。この質問は僕は、いい質問じゃないと思う。ていうのは、それを答えられるんだったらとっくに答えてると思う。それがわからないから僕自身は映画を見続ける。映画は付き合いが長すぎて、よくわかんなくなってる。ただ映画は好きだし、16ぐらいの頃から映画見てるわけだけども、時折、映画のない国に行きたいなって思うこともない。正直言って映画をそこまで考えてみるっていうのは楽じゃないし。エネルギー使うからね。なんで高々映画に、こんなに力注いでるんだ。いっそ映画なんてなかったらそんなこと考えなくていいのにって、とか思ったりするんで。あえていうなら、愛すべき相棒だけれども憎むべき相手っていうか。これだけ俺の人生を拘束しているわけだから。そうね、だからこれはなかなか一言では答えられない。

Q6,芸短生のいいところ

A:芸短の学生さんの映画研究の履修者さんに教えられたことは本当に少なくないっていうか。やっぱり二年生ってリアルに卒業公演や卒業制作があるわけじゃない。すごく身近なところで人生の一つの山場を迎えている人たちが映画研究受けて。毎回、レポート書くわけだから。やっぱり必死な人間が描くレポートっていうのは違うので、なんとかしてこの映画の中から掴みとってやろうって、そしてもう一つはみんな自己が高い人が多いんで、みんな見た映画を語りたくてっしょうがないのね。その言葉の中から、うーわ、これ俺も見逃していたわっていうものがあるわけで、一応偉そうなこと言ってるんだけれども、俺2013年に映画研究担当しているわけだけれども、久しくたって、多分あの頃よりも無視できない映画の見方があって、自分自身の中に映画の知識が広まって深くなるのは芸短生のおかげだなって思う。

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