祝!十冠!!記念講演会を前に、映像専攻の三原光尋先生にインタビューしました

尾道を舞台に昔気質の豆腐屋の物語を描いた『高野豆腐店の春』などが国内外で相次いで受賞し、これまで「10冠」に輝いている(実はもっとあります。詳しくは一覧を参照)大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科メディアコース映像専攻の三原光尋先生の特別講演「夢を叶える」が8月24日(日)午後12時50分から大阪芸大短大部伊丹学舎で開かれます。講演を前に、「世界のミハラ」の映画とのかかわりのキッカケや、次代を担う若者たちへのメッセージを聞いてきました。(大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科 橋本廉)

映像作品との出会いは?

僕は昔から身体も弱かったので、小中学校の頃は休みがちでした。学校を休んで家にいる時は漫画などを読んでいました。藤子不二雄Aさんや藤子・F・不二雄さんなどです。それがだんだん映画館に行くようになって、『燃えよドラゴン』や『ジョーズ』などにハマりました。『地獄の黙示録』なんて今まで何十回と見返しましたね。当時は観てもよくわからないのですけど(笑)、でもなんかとても惹かれるものがあって、映画にのめり込んでいきましたね。

1番思い出に残っている作品は?

ブルース・リーが好きで、『死亡遊戯』が1番思い出に残っています。当時、京都に京都宝塚会館(スカラ座)って映画館がありまして、土曜の朝イチから観に行きましたね。スカラ座の前にブルース・リーと敵の等身大看板があって、背の小さいブルース・リーが2メートル近くある敵に挑むわけですよ。当時中学生だった私は、こんなデカい相手に勝てるのかってワクワクしていました。

鑑賞後は映画のことで頭がいっぱいになりました。今見返したらそんなにストーリーが練られた映画ではないのですが、心に残る映画ですね。

大阪芸術大学を志望した経緯は?

高校生の時も映画ばかり観ていました。それで将来は映画の道に進みたいと思い志望しました。でも映像学科を受けたら落ちまして、芸術計画学科に拾ってもらいました。芸術計画学科の中にも映像専攻がありまして、そこに行きました。

でも今思えば落ちて良かったです。自分がただの映画ファンで大して勉強もしてないアホやってことがわかって(笑)。それから映画を志すためにはと、心新たに覚醒して勉強しました。もし映像学科に受かっていたら、そこで満足してダメになってしまったかもしれません。

今までの映画の撮影で、1番楽しかったことは?

楽しかったことはどの撮影も終わってしまえばいい思い出です。還暦にもなって朝の4時半からロケバスに乗って若いスタッフ達と炎天下の中で撮影するのは、苦しい時もありますが、全部いい思い出です。

映画撮影で苦労したことは?

苦労ではないですけど、映像の場合スタッフが50人とかいる現場もありますから、それを掌握することは、自分はそんなに得意ではないので苦労しますね。

監督って実は何もできないのですよ(笑)。カメラができるわけではないですし、録音や照明ができるわけでもない。監督は指揮者のように各パートの百戦錬磨のスタッフを現場をまとめることが仕事なのですが、苦労することもあります。

作品を作る上でのこだわりは?

これは私が20歳くらいの時に読んでいた本に、山田洋次監督が書いていた言葉なのですけど、『作りたいものがなくてはならない』、『作れるものがなくてはならない』、『何よりも作るべきものがなくてはならない』って言葉は創作の礎として大切にしていますね。

芸短で教員になった経緯は?

今から6年くらい前に短大の方からお話があり、引き受けました。自分が学生の時に孤独だったので、映画のことについて話せたり、教えてあげられたりする窓口になりたいと思って授業に取り組んでいます。

学生を指導する上で意識していることは?

押し付けないってことです。何かあれば相談に乗りますが、意見を押し付けるのは違うと思っています。二人羽織はできないので距離感は自分の中では意識しています。

三原先生の今度の夢や目標は?

残りの人生であと何本こだわって作品ができるか、それが目標ですね。まぁ、お金が集まるうちは作品を作り続けたいです。(笑)

三原先生にとって映画とは?

大好きなものです。これに尽きます。毎日映画のこと考えているのですよ。映画を作って、合間には映画館に行って、学生諸君らと映画を語り、家に帰ってもサブスクなどで映画を観ています。

人生にとって大事なことは?

1番思うのは健康体であることです。健康じゃなかったら何もできないですからね。身体の健康も大切ですが、1番大切なのは心の健康です。その二つが整って初めて、仕事や勉強などに取り組めますから。

心のケアをするために何かしていることはありますか?

お経を唱えています。40歳くらいからやっています。なんか意味は分からないのですけど好きなのです。落ち着きます。

これからの映画界を担う若者たちにメッセージがあればお願いします!

本当は若手みんなライバルですから消えて欲しいって思うこともありますけどね(笑)。それはおいといて、今映画界はキチンと映画を学んだセンスや才能がある人がどんどん活躍して出て来ています。若手はその創作は日本にとどまらず、どんどん世界に飛び出して欲しいです。もちろん、私もまだまだ負けじとがんばります。

みはら・みつひろ 1964年生まれ。京都府出身。大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科卒業。在学中より映像製作を始め、近年ではテレビドラマの脚本・監督も手がけている。代表作に『燃えよピンポン』、『あしたはきっと…』『村の写真集』『オレンジランプ』『高野豆腐店の春』など。