時間があるときにこそ読みたい!
青空文庫名作選
『青空文庫』という名前を知っていますか?青空文庫は、著作権の保護期間が切れた小説や、許諾を得た作品を無料で読むことができるWEBサイトです。現在絶版になっている作品も登録されているので、「本は紙派」の私も時々お世話になっています。今回はサイト内で読める作品の中から、特に好きな名作小説を2作ほど紹介させていただきます。あなたも是非、時間があるときにこそ読みたくなる名作を探してみてください!
①永遠の未完成。読み比べを楽しむ――宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
最初に紹介するのは、『雨ニモマケズ』などで有名な宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。宮沢賢治が定稿を決める前に亡くなってしまったため、どの草稿が正式なものなのかは判明していません。出版社によって採用している原稿が違い、複数の原稿がミックスされている場合もあります。しかしどれも一部のページやシーンが欠けているなど、作品としては未完成のままとなっています。青空文庫には特に有名な角川文庫版(第3稿&第4稿)と新潮文庫版(第4稿)が登録されています。この2稿は話の大筋としては大きな違いはありません。
私は新潮文庫版を紙で、角川文庫版を青空文庫で読みました。角川文庫版は第3稿と第4稿が織り交ぜられていますが、読んでいて特に違和感を抱くことはありませんでした。角川文庫版の方が少し暖かみのようなものを感じられる気がしますが、私はどちらかというと新潮文庫版の方が好きです。
②手に汗握る名勝負の幕開け――江戸川乱歩『怪人二十面相』
次に紹介するのは、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ、その第1作目である『怪人二十面相』。実業界の大立者である羽柴壮太郎の家に、世間で噂の盗賊「怪人二十面相」から予告状が届くところから物語が始まります。宝と次男を盗み出され、身代金の代わりに安阿弥の作の観世音像を要求された羽柴氏は名探偵:明智小五郎の元を尋ねますが、明智は留守で、代わりに助手である小林芳雄が事件の解決に挑むことに。明智先生が帰ってくるまでの小林少年の頑張りも見どころですが、小林少年や少年探偵団の団員たちがピンチに陥るシーンの描写にとてもリアルな気持ち悪さがあっておすすめです。また、明智先生と怪人二十面相の駆け引きも非常にハラハラさせられます。私は「巨人と怪人」の章が一番好きです。
現在青空文庫では『黄金の怪獣』までの全話と、それ以降の一部作品が登録されているので、時間を忘れて没頭したいときに、ぜひシリーズで読んでみてください。