神戸のパッション、早駒運輸株式会社 渡辺真二社長にインタビュー
―どんな仕事でも同じ熱量で全力を注ぐ―
明治時代から神戸港で曳船業、繋離船業、旅客船業、警戒船業、海上防災業など幅広い事業を展開してきた早駒運輸株式会社。神戸港と共に140年以上の歴史を歩んできたこの会社の舵を取るのが、渡辺真二社長だ。
穏やかな口調で語り出した渡辺真二社長が最初に挙げた言葉は“パッション(情熱)”「情熱がなかったら人も組織も動かない。言葉に温度をのせ、信頼を積み上げることが大事だと思っています」。と強く芯のある声で語る。
早駒運輸は、明治18年、早駒組としての創業以来、物流の下支えを担う“海の仕事”を守りながらも、近年では新たな挑戦にも積極的だ。女子ラグビーチームの運営や、弦楽オーケストラのプロデュース、神戸の活性化のために社会貢献活動など、利益に直結しない取り組みにも全力を注いでいる。「本業も地域の仕事も、どちらも早駒の仕事。何が一番かではなく、全部に同じ熱量で向き合っています」。そう語る渡辺真二社長の姿に、ビジネスの現場と神戸の街を同じ目線で見つめる姿勢が印象的だった。
港の現場にリスクはつきものだ。事故を完全にゼロにすることは難しい。「だからこそ、仕組みづくりと、教育で、未来に活かす。夜があれば必ず朝が来るんです」。
事実から目をそらさず、不具合の再発を防ぐためのルールを整える。社員全員のモチベーションのベクトルを上げ、前へ進む。厳しい現場を知るからこその言葉には、渡辺真二社長の重みと温かさがにじむ。
会社を受け継いでいく中で、変わらず大切にしているものもあるという。
それは「“丁稚どん(でっちどん)精神”です」。
神戸港を歩く人は全員お客様。どんな小さな仕事でも断らずに受け、その仕事に全力を尽くす。まず“できます”と応え、そこから方法を考える。それが早駒運輸の根底に流れる精神だ。長い歴史の中で培われたこの考え方が、今も会社の礎になっていると語る。
渡辺真二社長が大切にしている座右の銘は「出すぎた杭は打たれない」。だという。「中途半端に止まると出ている杭は打たれる。ならば出来るところまで挑戦する。時は進み続けているから、立ち止まることは後退にしかならない」。挑戦を恐れず前へ進むという信念が、言葉の端々に感じられた。神戸をスポーツと音楽文化で賑わう街にしたいと熱く語ってくれた渡辺真二社長。
取材を終えて印象に残ったのは、完璧を求めて足踏みしがちな学生の自分たちにとって、「出すぎた杭は打たれない」という新鮮で力強い言葉が残った。神戸の港町で、挑戦を恐れず前へ進み続ける人がいる。そう思うと、不思議と海風が背中を押してくれるような気がした。

神戸の未来にビジネスのビジョンを熱く語る渡辺真二社長

「boh boh KOBE」は神戸ウォーターフロントの新たな風物詩となっている

丁稚どん精神で今日も神戸の明日を描いている。